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執筆者の写真家頭 恵

過払い金について知っておこう

更新日:2020年2月27日

 過払い金とは文字の通り払いすぎたお金のことですね。言葉を知らない方でもなんとなく予想がつくかと思います。では、過払い金がどのようにして発生するのか、どれくらいのお金が戻ってくるのか、そこまで知っている方は少ないのではないでしょうか。本稿では、過払い金について事例を交えながら分かりやすくご説明させて頂きます。

 過払い金とは、払いすぎた利息のことです。

 法律上、年15~20%が上限である利息を超えた利息を支払っていた場合、過払い金が発生し、貸していた業者に対してその払いすぎた部分を返してもらうことになります。

 では、実際にどのようにして過払い金が発生するのかご説明させて頂きます。

過払い金発生の理由は、いわゆるグレーゾーン金利の存在にあります。

国は2つの法律を作り、その内容には齟齬がありました。

1つは利息制限法、もう1つは出資法です。


利息制限法には、以下の条文があります。

(契約書が苦手な方は読み飛ばしても大丈夫です)


第一条 金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。

一 元本の額が十万円未満の場合 年二割

二 元本の額が十万円以上百万円未満の場合 年一割八分

三 元本の額が百万円以上の場合 年一割五分


 つまり、お金を貸すとき、最大では年利20%しか取れず、100万円以上元金がある場合にはこれが15%となります。

 しかし、従前、出資法では年29.2%を超える利息を取った場合にのみ罰則を定めていたことから、各業者は、おおむね25~29%の利息を取っていました。なお余談ですが、この出資法の上限金利は以前は109%でしたので、貸金業者は40%を超えた利息で貸付をしている時代もあったのです。


 さらに、みなし弁済という制度がありました。これは、貸金業者が上記の利息制限法を超える利率の利息を受け取っても、貸金業法43条(すでに廃止)の所定の要件を満たす場合には有効な弁済があったものとみなす、つまり上記の利息制限法は適用されないという制度でした。しかし、平成18年1月に、最高裁はいわゆる期限の利益喪失約款がある以上、任意の弁済とみなすことはできないとの判決を出し、この貸金業法43条を事実上空文としたのです。これにより、貸金業者は過払い金の請求を拒むことができなくなりました。

そのため、これ以降、過払い金の返還請求が多数行われるようになったのです。

 過払い金返還請求においては、発生している過払い金は全額回収できます。

しかし、全額回収しようとすると業者も裁判で争ってきて、回収までに時間がかかります。逆に言えば、時間をかければ必ず全額回収できるのが過払い金なのです。


 アイフル等一部の業者は、たとえば「2か月後なら40%、4か月後なら60%、6か月後なら80%」などと比率をつけて提示し、なるべく和解金額を引き下げようとしてきます。しかし、このような提示に負けず、裁判をすれば、ほぼ全額の返還が可能です。


 では、なぜ貸金業者は額は多くなってもなるべく支払を遅らせようとしてくるのか?というのは、正直わかりません。しかし、私としてはこれは利息の支払に理由があるのではないかと思います。過払い金の返還が6か月遅れれば、その分を他の消費者に貸し付けて年18%の利息が取れるのです。一方、この6か月間で過払い金返還請求者に支払う利息は年5%に過ぎません。すこしでも返還を遅らせることで、利益を出すという狙いがあるからこそ、どんな過払い利息がかさんでも返還を遅らせてくるものであると考えています。

 才太郎さん(仮名)は、遊ぶお金や車のローンが払えなかった時に消費者金融から借入をしていました。10年ほど借りて、返してということを繰り返していましたが、住宅ローンを組む際に消費者金融からの借入があると審査に通らないのではないかと思い、おまとめローンを組んで全額返済しました。

 その後、過払い金の宣伝を目にして、自分にも過払い金があるのではないか、と考えて依頼したところ、このとき完済した5社で合計350万円の過払い金があることがわかりました。

才太郎さんは、この取り戻した過払い金でおまとめローンも完済、生活にゆとりができたので住宅ローンの繰り上げ弁済も検討しています。

 千夏さん(仮名)は、母子家庭で育ちました。

生活はギリギリで、千夏さんが働けるようになったころにはお母さんが体調を崩し、生活費の補填のためにレディースキャッシングを始めました。35歳になるころにはその金額が300万円を超え、お母さんも高齢で働けなくなったことから、債務整理を依頼することになりました。

 依頼時はかなりの借入金があったので、過払い金のことは考えずに債務整理の受任通知を出しましたが、各社から出てきた履歴を計算すると、3社すべての過払金を合計すると500万円を超えていました。

 中には、回収困難な「ネットカード(現在は倒産)」も含まれていましたが、千夏さんの依頼した時期にはまだ回収可能な業者でした。

 すぐに請求手続に入り、過払い金を全額回収することができました。

この過払い金のおかげで千夏さんのお母さんも仕事を辞めて、療養に専念することができるようになりました。

 柴田さんは2人兄妹で、お父さんは85歳の時に亡くなりました。

亡くなった際、借入をしていた消費者金融からのカードがあったので、会社に連絡したところ、「もう返さなくていいですよ」と言われました。

 その時は、安心していたのですが、過払い金のCMを見て、もしかしたらお父さんの過払い金があるかもしれない、と思い当事務所に相談に来ました。

 当事務所で履歴の開示請求を行ったところ、25年ほど取引をしている履歴が開示されました。

 取引額は極めて多く、計算上1500万円以上の過払い金が発生していることが判明。

 利息も含めると過払い金額は2000万円を超えていました。

交渉では元金割れの提示しかないため、すぐに訴訟提起し、9か月ほどかかりましたが利息含めた金額を回収することができました。

お父さんが残した最後の財産を、二人は無事受け取ることができました。


 過払い金とは、命のお金であると私は思います。

昭和の終わり~平成半ばまでは、消費者金融は我が世の春を謳歌していました。

しかし、それはお金を借りていた人たちの利息の支払の上になりたっていました。

利息を支払うためには、働いてお金を稼がなくてはいけない。お金を稼ぐために時間が使われる。人生に残された時間、それはすなわち人の命そのものです。


 いわゆるクレジットカード破産が増加し、平成15年には自己破産件数が年間24万件以上とピークに達しました。そういう状況の中、消費者が時間を、すなわち命を削って返済していた利息が、実は「過払い」であるという画期的判決により、多くの消費者の命が救われたのです。当事務所も、この命のお金を1円でも、かつスムーズに取り戻せるように皆様のお手伝いをしております。




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