私は長く弁護士をしていますが、債務整理の相談を受ける中で、個人再生手続はあまり知られていないという印象を受けます。「任意整理」「破産」という手続はいずれもイメージしやすいのですが、「個人再生」はその言葉から内容がイメージしにくい、ということもあるかもしれません。しかし破産を避けたいという人には、とてもメリットがある制度なので積極的に利用してほしいです。
もしあなたが抱えている借金が500万円であれば、約100万円を支払えば完済したことになり、これを3年(分割)で支払うとすれば、月3万円程度におさえられます。破産手続より効果は小さいものの、任意整理と比べるとメリットは大きいです。
破産と違って100万円支払う分、破産よりもさまざまな点で優遇されます。個人再生の細かい話は別に記載するとして、この記事では破産との違いと、個人再生のメリット、債権者に反対されるリスクと可能性についてまとめました。
個人再生と破産手続を比較した際の個人再生のメリットについて、いくつかご紹介します。
(1)住宅ローンを組んでいる場合に住宅を売る必要が無い
これは一番のメリットではないでしょうか。いくつか条件がありますが、その点についての詳細はまたの機会に書きたいと思います。
(2)免責不許可事由が無い
借金の原因、返済等の経緯が一切問題にならないというのは大きなメリットです。破産の場合「全額ギャンブルや投資等の借金」「一度も返済していない」「ショッピング枠の現金化」といったものについては調査され、反省文の提出を求められることもあります。さらに裁判所は「2回目、3回目の破産」には厳しいですが、個人再生であれば、以前に破産した場合でも、個人再生した場合でも、特に問題にはなりません。
(3)財産関連の調査が、破産よりゆるやかである
破産でよく問題になる、「親族友人からの貸し借り」「弁護士に依頼する直前の財産処分」などの行為については、個人再生の場合に否認されたとしても、清算価値が上乗せされるだけであり、その効果は少ないです。破産手続を取るリスクとして、財産処分を裁判所、管財人の権利としてしまうということがあります。上記のような場合、否認権行使をされてしまい親族友人に迷惑をかけたり、財産処分の調査をされることもあります。また保険や財産の処分方針について、管財人と意見対立し、結果として破産後に必要と考えていた保険や不動産が処分されることもあります。
個人再生はその手続き上、債権者の半分が反対しないことが要件になっています。よく相談者の方から「反対されるのではないか」という心配の声を伺いますが、実際に反対してくる債権者はわずかです。実際に注意すべきなのは、完全にキャスティングボードを握っている債権者が単独で存在する場合です。
具体的には、以下の2つが考えれられます。
(1)債権者が1社または2社しかない
この場合、1社が反対することによって、個人再生が成立しなくなります。
(2)半額以上の債権を持っている債権者がいる
この場合も、その1社の反対がすることで個人再生が成立しません。
しかし逆に考えてみると、これらのケース以外では反対されても心配はないとも言えます。個人再生は、メリットも多く、反対のリスクも少なく使いやすい手続です。再生計画立案方法などの面倒なことも、弁護士にすべて一任できます。「借金が返せないけど破産は避けたい」という方は、まずこちらを検討してみることを強く推奨します。
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