借金にも「消滅時効」というものがあります。時効とは、時間の経過により効力が発生する、という意味の法律用語です。消滅時効とは、お金を貸した債権者が借金を返済してもらうことは当然の権利ですが、長期間返済の請求がなく動きがなかった場合に、その権利が消滅するということです。
ただし、債務者が長期滞納し、消滅時効が成立する時間が経過しただけで、返済義務が無くなる訳ではありません。返済義務を無くすためには、時効期間が経過した後で、正しく時効の援用という手続きが必要です。
「時効の援用」とは、債務者が債権者に対して、「消滅時効によって、借金を返済義務が無くなり、返済をしない」と意思表示することです。時効の援用を行わないと、いくら消滅時効期間を経過しても借金は無くなりません。この時効の援用は、借金の保証人も行うことができます。また、時効の援用が完了すれば、債務者本人と保証人両者の返済義務を消滅させることができます。
それでは、具体的な方法を説明します。配達証明付き内容証明郵便で時効の援用を通知をするのが一般的です。口頭でも行うことができるのですが、確実に証拠を残せる内容証明郵便で行うのがよいでしょう。さらに、配達証明をつけることによって、いつ相手に送付されたかが明らかになります。
時効の援用通知を送るには、まず時効の期限を確認しなくてはなりません。期限の経過前に援用通知を送ってしまうと、藪蛇、つまり相手が時効間際だと気付いて請求手続きを取ってしまうかもしれないのです。
では、どの程度の期間、権利行使がなければ時効になるのでしょうか?借金の消滅時効は、最後の返済日から原則5年です。ただ注意しなくてはならないのは、「時効は更新することがある」ということです。時効は長い間、動きが無い状態・権利を行使されない状態を法律的に保護する為の制度ですが、法律に定められた要件を満たす動きがあると、時効の進行が更新され、リセットされてしまいます。
法律で定められている更新とは、裁判を起こされた場合、もう一つは債務の承認の場合です。債務の承認とは、自分の支払い義務を認めるような行為をすることです。例えば、時効期間経過後であっても、小額でも借金を返済したり、分割払いのお願いをするなどの、借金のあることを認める発言をしたり、文書を書いたりする行為です。このような場合も時効期間がリセットされてしまいます。また、債権者から連絡があった場合には、債務の承認をしないように対応しましょう。
それでは、時効援用手続きを行った後はどうなるのでしょう。援用の手続きは、裁判の中で行う場合と、裁判外で行う場合があります。裁判の中で行う場合は、債権者が債務者に対して、裁判で訴えたが既に時効期間が過ぎており、裁判で時効の援用をする場合です。この場合は、判決で、債務者側の訴えが認められることで、時効の援用が認められ、手続きが完了することになります。
一方の裁判外で自分自身で対応した場合は、債権者が時効の援用を受け入れて、手続きが完了しているかがよくわからないケースもあります。債権者から時効の援用通知書を受け取ったという連絡がある場合もあれば、無い場合もあります。時効の援用が完了しているか知りたい場合は、信用情報機関に確認してみる方法もあります。機関によって異なりますが、完了していれば、借金の延滞情報が抹消されているはずです。
債権者が黙って時効期間が完了するまで待ってくれることはなかなかありません。債権者は、時効の更新をしようとしたり、様々な方法で、借金を回収しようとするでしょう。しかし、債権者の方でも、債権管理の手間から請求が滞り、時効になってしまうのはそこまで珍しいことではありません。
もし、長期間返済が滞り、動きのない借金を抱えている場合は、弁護士などの専門家に相談してみましょう。時効の援用の手続きを行うことができるかもしれませんし、もし、それが難しい場合でも債務整理の解決方法を導きだす事ができると思います。
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