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執筆者の写真家頭 恵

セクハラを理由に解雇?対象となる内容とは?


 職場で起こる労働問題として、セクハラ(セクシュアルハラスメント)、パワハラ(パワーハラスメント)、マタハラ(マタニティハラスメントと、さまざまなハラスメント(日本訳:嫌がらせ、いじめ)が存在します。

 今回取り上げる「セクハラ」とは、相手にとって望ましくない性的な言動や行動によって個人の尊厳を不当に傷つけたり、心理的・身体的に苦痛を与えたりする行為をいいます。ただこれは非常に微妙なタイトルです。セクハラを理由にした解雇はありますが、一概に「セクハラがあった(被害者がセクハラだと感じたことがあった)=加害者の即解雇」とはいえません。


 セクハラに当たる行為内容には、言動や態度、軽くぶつかったといった程度のものから、もはやハラスメントという程度の言葉では済まない犯罪に近いようなものまであるためです。また行為自体だけでなく、加害者と被害者との力関係の優劣や属性といった要素もあります。


 想像に難くないですが、例えば学校の場合、教員同士よりも教員から児童生徒に対するハラスメントは、当然、解雇の方向に働きます。


 解雇まで至るケースには、犯罪ないしセクハラ行為のあった期間が長期間にわたるものや、いわゆる環境型ではなく対価型のセクハラで、複数回に及んでいるという事例が多いようです。


① 対価型

加害者が自らの地位を利用し、意に反すると(被害者に)不利益が発生すると思わせて従わせるハラスメント行為を行う分類。例えば、上司から「賃金を上げてほしかったら、私と交際しろ」と言われる場合等です。基本的に加害者と被害者が1対1になるハラスメントで、密室の環境で発生しやすいものです。



② 環境型

職場全体としてそうした不適切と思われる環境を作り上げる、ないし放置してしまうことです。性的なポスターを貼る、卑猥な会話をする等、飲み会でお酌をさせる等がこれに当たります。多数に対するハラスメントです。


 そもそもこうした分類自体にセンスがないという人もいますが、歴史的な分類に従っています。

 職場の宴席での上司の発言が問題になった裁判例があります。宴会で「胸が大きいな」などの発言をした、自分の膝に座らせる等の行為をした上司を懲戒解雇しましたが、これはいきすぎであるとして、解雇は無効となりました。これを対価型ととらえれば悪質だということになるのでしょうが、裁判所はおそらく環境型に近い類型であるととらえて、解雇にしなかったと思われます(東京地裁平成21年4月24日判決)。

 あくまで一般論ですが、集団に対するセクハラ(集団での飲み会の場や人目につくところで行われるもの)は、あまり悪質でないケースが多く、1対1の場合には、一度で終わらず、内容も執拗、かつ悪質になりやすい傾向にあります。

 

 他の裁判例を見ても、解雇されるケースは対価型が多い印象です。強制わいせつに至らなくとも、加害者の立場が相対的に強くて、内容が悪質な場合には解雇も有効となりやすくなります。私どもの事例で見ていると、いわゆるスクールセクハラ、学校現場で教師が学生・生徒に対して行うセクハラについては解雇の事例が多くあるようです。スクールセクハラは、まさに立場が強いということの典型例です。  それほど多くの解雇事例があるわけではありませんでしたが、強制わいせつ等の犯罪に至るケースは、当然に解雇が有効とされています。




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