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執筆者の写真家頭 恵

カスハラに負けない!覚えておきたい3つの対策とは?


 厚生労働省の資料によると、カスタマーハラスメントは以下のように定義されています。

顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・様態が社会通念上不相当なものであって、当該手段・様態により、労働者の就業関係が害されるもの

 つまり、顧客からの商売上の不当な要求や義務のないことへの強要、ということになります。


 もちろん現代の日本では、顧客が企業相手に義務のないことをお願いすることは当然に許されています。そのため、例えば「注文した商品が間違って届いたので、家までもってきて」や「商品が不良品だったので、全額返金しろ」と発言すること自体は、特に違法の問題は生じないでしょう。もちろん、商品やサービスへのクレームや不満を企業の窓口(お客さま相談室)へ連絡することも違法ではありません。


 しかしそれらのお願いの域を超えて、企業側が断っているにもかかわらず要求を継続すること、クレームを延々と入れることで相手の業務が滞れば、威力業務妨害罪(刑法233,234条)の成立もありえます。


 またクレームにかこつけて、その要求を達しないと、何等かの不利益を告知すること、例えば「ネットで公開するぞ」「店員に危害を加えるぞ」「警察に連絡するぞ」などの発現があれば、 これらは強要罪(刑法223条)になりえます。


 法的観点では、カスタマーハラスメントという言葉がどうして流行しているのかよくわからないというのが正直なところです。ハラスメントの元祖であるセクハラ(セクシュアルハラスメント)は、その行為のみを切り取っても、犯罪や民事上の不法行為には至らないものの、被害者と加害者の力関係を考えると被害者がこれを拒否ないし回避することができないような行為だからこそ、民事上の不法行為と評価されるものです。上司と部下に生じるパワハラ(パワーハラスメント)も同様です。


  一方、カスハラ(カスタマーハラスメント)とされる事例は、これまでの報道等を見る限り、その行為のみを切り取ると、威力ないし偽計業務妨害罪、他には暴行罪、侮辱罪、強要罪、恐喝罪、脅迫罪等が成立すると思われます。

 クレームを延々と繰り返すのは、威力業務妨害罪。「ネットで公開する」「消費者庁に連絡する」等の不利益の告知をもとに要求を通そうとするのは、強要罪または恐喝罪。従業員の身体に暴力を加える告知というのは、脅迫罪に当たります。犯罪行為ですので、警察が介入できる事案です。民事上、損害賠償請求もできます。


 以下に引用する報道について弁護士もコメントしていますが、侮辱罪が成立すると思われます。カスハラの結果として「バスが定刻より遅れている事実」から、威力業務妨害罪もありえるところです。



 私には、犯罪行為をわざわざ「カスハラ」と定義する理由が理解できません。それでも、世にカスタマーハラスメントという言葉があるのは、インプレッション・クリック数が稼げるから・・・ではなく、日本では「人からお願いされたら断ってはいけない」という倫理観や、「お客様は神様(顧客は対等ではなく目上の存在である)」という慣習、それまでそういったお客様の行為に耐えてきたという背景があるのでしょう。


 私の提案するカスタマーハラスメントの対策としては、以下の3点があります。


(1)カスハラ=犯罪行為という意識

 従業員自身が客の行為をカスタマーハラスメントと感じたら、それはほぼ犯罪であるという確信をもつことが大切です。


(2)チームで対応する環境を整える

 従業員ひとりでは対応せず、複数人で毅然とした対応をとれる環境を整えておきましょう。日頃の情報共有や記録も大切です。状況に応じて、弁護士への相談や警察への通報を検討しましょう。


(3)客観的な証拠集め

 当たり前のことですが、法的手段をとるには証拠が重要です。電話のやりとりは録音する(相手には録音していることを告げる)、防犯カメラで現場を録画する、現場にいた第三者の証言の記録をとる等が考えられます。




 当事務所でも、強いカスハラを受けている場合、顧客との直接交渉も承ります。なかには、訴訟に至ることなく交渉のみで解決にたどり着くケースもあります。カスハラでお悩みの企業のご担当者様がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。


※参考サイト

カスタマーハラスメント対策企業マニュアル作成事業検討委員会(R3年度厚生労働省委託事業)「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」



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