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執筆者の写真家頭 恵

【事例解説】寝坊で解雇(クビ)!! これは正当なの!?


結論から言えば、解雇理由が寝坊であれば、正当な理由として認められることはないでしょう。

そもそも法律上、労働者の解雇を正当化するためには「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当」でなければなりません。労働者の寝坊というのは単純な過失であり企業に対する損害は小さく、それを解雇理由とするのは、社会通念上相当なものではないと考えられます。

有名な例として、アナウンサーが2度遅刻したために解雇されたが、これは無効と判断されたという裁判例があります(「高知放送事件」※この記事のために調べたらWikipediaの記事までありました!)。


アナウンサーが遅刻というのは、一般的な職業と比較して損害が大きいような気がしますし、実際の裁判例においても「定時放送を使命とする上告会社の対外的信用を著しく失墜するものである」としているにもかかわらず、解雇を無効としています。


この判断の中身を見ると、アナウンサーという仕事の重要性を述べながら、この労働者が反省していて放送内ですぐに謝罪したこと、会社側がこの遅刻に対する対策をしていなかったことなどが述べられています。


そうすると、単純に寝坊といっても以下の3点が評価の対象になることがわかります。


①寝坊という過失により会社に対してどの程度の影響が与えられるか

②労働者の反省の態度や失態回復の努力

③会社側の過失が無かったか


これは解雇や懲戒に関する裁判例すべてにいえることですが、そういった失敗に対する労働者の態度や、会社の体制、仕事内容などは必ず評価されています。他には、この「高知放送事件」でははっきり述べられていませんが、処分に至るまで適正な手続が取られたかどうかも大切です。


このアナウンサーの場合では本人が来なければ放送自体できないという問題がありますが、例えば当法律事務所の職員が1時間遅刻しても、それだけで何らかの問題が発生するとは思えませんので、一般的な事務職等については遅刻は大した問題にはならないですね。

漫画などであるように、もうどうせ間に合わないから反対方向の電車に乗って海に行ったとか、職場に謝罪もしないとか、そういった態度を取っている場合にはマイナス評価になるでしょう。

要するにその1つのミスで損害が大きいと思うのであれば、それをカバーしておきましょう、ということです。経営者ではない単なるサラリーマンにそこまでの責任を負わせるのは酷だ、ということですね。ということは、高給取りであれば別なのか?というのはやや話がずれてしまうので、またの機会にしたいと思います。


少し話はそれますが、そもそも標準的な就業規則では「〇日以上の無断欠勤」の場合、懲戒解雇すると定められていることが多いです。これは、厚生労働省の作成したモデル文書をそのまま就業規則にあてているパターンですね。


「高知放送事件」の高知放送においては、就業規則において解雇されましたが、この点について判決文も特に言及していませんでした。私の感覚からすると、3日や4日の無断欠勤ですら解雇にならないのに遅刻で解雇するなんて考えられないのですが、ラジオ放送に穴をあけたというのが会社にとってよほど許せなかったのでしょうか。







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